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プロセスレコード

水商売をしていました。看護師になりました。

新人看護師へただ1つのアドバイス

水商売を卒業して、看護師になって1年が過ぎました。

 

大学の時の仲良しの後輩が同じ病棟に配属になり、早速私は叱られている姿を見られたので学生の時と違って「かっこいい先輩面」をするのはやめようと決意しています。

 

新人看護師が入職して1ヶ月半が経ちました。「1ヶ月間は先輩にくっついて仕事を見ているだけ」という病院から「見学は1日だけで翌日から受け持ち」という病院まで様々ですが、そろそろ受け持ちを始めて実際に看護行為を行うようになった新人さんが多いのではないでしょうか。

 

昨年の自分を思い出してみると、正直5月と6月は人生のトップクラスに入るのではないかと思うくらいに辛くて、「いじめられてるわけでもないし私なんかが正社員として収入を得てるのになんで辞めたいとか思っちゃうの!?」というわけのわからない涙と謎の蕁麻疹、突然の発熱、慢性的な動悸と胸痛に悩まされていました。

 

そんな夏くらいに我々の業界最大の職能団体の研修で書いたアンケート、出席していた新人看護師の9割近くが鬱傾向という恐るべき結果が出ていたそうなので、似たような状況の新人看護師が今年も大量にいるはず。ということで新人看護師に向けて2年目看護師として現実的なアドバイスをひとつだけします。

 

 

仕事が辛いなら今すぐ精神科を受診して向精神薬を貰いましょう。

 

 

冗談でもなんでもなくて。今振り返れば、サポートも何もない状況で「あの」環境に放り込まれることがおかしいのです。

 

おそらく大学3年生あたりから就職について考え始める人が大多数であろう一般企業の大卒新入社員の1年以内での離職率は13%程度です。そしてあの眠れなくて辛くて苦しくて永遠に続くと思われた実習を耐えて国家試験に受かった看護師の離職率は10%以上。就職までに割く時間とお金の割に大して変わらない時点でヤバさが伺えます。

 

冷静に考えてみれば、

多少知識を持っただけの一般人が、急に人間が亡くなるところに延々と居合わせて、

他人の身体にブスブス針刺して痛い思いさせて、

「毒薬」と書いていある点滴を「間違えたら人殺しちゃう」って思いながら投与して、

ご家族が持ってきちゃった誤嚥しそうなものを発見して「喉に詰まらせたら私の責任だ」って青くなって、

「役に立ちたい」と思った患者さんには嫌味を言われて殴られて、

上から罵倒されることはあっても、弱音を吐けば「あなた看護師になったんでしょ?」なんて言われて。

 

「看護師になった」といくら自覚していたところで頭と心は必ずしも連動しません。私達は人間です。

普通の企業で働いていたって新しいことをキャパオーバーなまでに詰め込まれることは相当なストレスなのに、そこに「自分がミスしたら人が死ぬ」なんてプレッシャーがかかったらどうしようもなく辛くなるのは当たり前。説教はしてもサポートはしないこの業界が狂っているだけで、新人側の「辛さ」にはなんの落ち度も無いということは新人看護師全員が知っておくべきだと思います。

 

それでも、看護師として最初に目の当たりにする光景達へのショックが落ち着き、現実を受け入れられるようになるまでの辛さを乗り越えた後に待っている楽しさもあることは事実ですし、もっと単純に、奨学金等の事情ですぐには辞められない人も多いでしょう。

 

看護という業界がいくら時代遅れな体育会系で非合理的でも、入職して最初の1年目、2年目にはどうにもできない。ならばせめて自分の身は自分で守る術は持っておいた方が楽に生きられます。日本では一部の緩和病棟にしか導入されていない、医療職者向けのカウンセリングやストレスコーピングの文化は海外では当たり前に取り入れられている地域もあります。使える資源を利用するのは弱さでは無く賢さです。

 

私自身は元々精神科の通院歴があったものの、いよいよ気持ちが耐えられなくなってきた時にも「また行くのか…」という抵抗は強くありました。元々通っていたところとは別の場所の、馴染めない田舎の馴染めない診療所ではありましたが、少なくとも処方された向精神薬と睡眠薬で動悸が収まるだけで体調は全く違います。精神科なんて嫌だ、という気持ちで拒否していたら今頃看護師を辞めていたように思います。休日に飲みに行ってどうにかなるような精神状況ではないのは明白です。

 

大学からの同期が「先輩達、休日出勤も全然するし、患者さんの為に命懸けてますって感じなんだけど、普通の、看護以外の会話ができないんだよね。看護師って『私達も辛いけど患者さんのために耐えてきました』ってプライドが高すぎて、看護以外のことには全然使えない人間になってる感じ」と言っていて。

そうかこの業界でひたすらに「耐える」という行為に正面から向き合い続けるとそういった歪み方をするのかと恐ろしくなりました。

資本主義の現代で「耐えて、勉強する」だけで効率と採算性を求めない生活を送る業種の質は確実に下がっていきますし、看護師の70%以上が「辞めたい」と思いながら仕事をしているというデータの一端には、「辞めたいけど他に自分の価値を見出せない」も含まれているように感じます。 

 

少なくとも今すぐ辞められる状態でもなく、「こんなに役に立たない私に価値は無い」と思わざるを得ない状況に置かれている新人看護師の皆様が、昨年の私のように「これから化粧をして綺麗な格好で富士の樹海へ向かい首を吊るか、明日仕事へ行くかどっちが楽だろう」と考えることの無いよう、心から願う次第です。