プロセスレコード

水商売をしていました。看護師になりました。

これから実習へ行く看護学生に伝えたいこと

 
水商売を卒業して、看護師になって4ヶ月半が経ちました。
 
お盆の時期は人手不足がひどくて困りますね。1日中走り回りっぱなしの看護師の皆様お疲れ様です。
最近は水商売の時の倍以上の労働時間で半分以下の給料であることにも何とも思わなくなり、患者様にそれなりの話もできるようになり、ぼちぼち楽しく看護師できるようになってきました。慣れってすごい。
 
 
さて、私の病院は6月くらいからちょこちょこ実習の看護学生が来ておりまして、もちろん新人の私が指導につくことはないので、去年までの自分を思い出しながら微笑ましく見守っております。物品の場所をこっそり教えてあげたりもします。
 
専門学校は2年生の秋あたりから実習が増えるところが多いらしく、もうすぐうちの病棟もででーんと実習生が増えるようです。
 
そんなわけで、学生の時を思い出しながら、実際看護師になってみて、知っておけば良かったなあと感じること、そしてあわよくば、これから実習へ行く看護学生に伝わって欲しいことを。
 
 
まずひとつめは、患者に影響を与えようと思うな、ということ。
 
実習前の授業の中で、多くの先生方は「去年の先輩でね~」と、患者と実習生の間の感動的なストーリーをやたら披露したがります。私自身、実習に出る前は「先輩を見習って私も患者さんのために!」と思っていたものです。
 
が、実際実習にでてみると、とりあえずミスをしないことで必死だし、患者が少し熱を出すだけでこっちが倒れるんじゃないかと思うくらい焦るし、超頑張ってるのに当の患者の反応はいまいちだしと、思うようにいかないことだらけで毎日やるせなさでいっぱいになります。
学生の、特に2年生くらいの時はそういったことの積み重ねで「私って看護師に向いてないのかな…」などと思ったものですが、看護学生後半になってようやく、感動的なストーリーは自分の努力だけでなく患者との相性や偶然の影響あってのものであり、大半の看護学生は私と同じような毎日を過ごしていたことを思い知りました。
 
「患者さんのために」を思うことは大切なことですが、それが空回りしたからといってむやみにへこむことなく、空回りするのが当たり前だと最初から現実を認識しておくことが、対人援助関係を学ぶ上での基本的な姿勢なのではないでしょうか。
 
 
次に、グループの友人と自分を比較しないことが、精神的に健全に実習を乗り切る上で超重要。
 
実習中、グループの中で自分がどれ位「できている方」なのかは嫌でも気になります。例えば記録の面では「あの子は用紙いっぱいにアセスメント書いてる…新聞かよ…私は半分しか埋まってないのに…」と、記録した量=自分の実力差のように感じてしまうことは多くの看護学生に共通しているように思います。また、「〇〇さんはこんなに書いているのに…」とわざわざ比較してくる頭の足りない指導教員もいます。
 
当然ですが、例えば物を書くことが得意な人もいれば苦手な人もいます。そもそもみている患者さんが違うグループの人と記録の量を比較すること自体ナンセンスです。
記録だけに留まらず、例えば最初からやたらと採血が上手い子、患者さんとのコミュニケーションが得意な子、指導者さんに気に入られるのが早い子など、「自分よりできる子」を実習中はどうしても意識してしまうものですが、あくまで実習の目的は看護師国家試験を受けるのに必要な単位を取得することであり、そのコミュニティで1番になることでは無いはずです。
 
「目的に向けて頑張ること」と「他人とのちまちました比較の中で浮き沈みすること」は全く別物です。気になる気持ちはわかるけれど、実習を乗り越えるためにも、どうにか割り切るように意識しましょう。
 
 
そして何より、実習に行っている自分をちゃんと褒めてあげることが、社会の中からかなり浮いた存在である「看護実習」に洗脳されずに地に足を付けて実習を乗り越える上で、何より大切かなと感じます。
 
学生の時、私には看護以外の大学の友人の方が多かったのですが、他のどんな大学生と比較しても、睡眠時間や要求レベルの面において看護学生の実習生活は異常です。多くの先生方は「私達の頃よりましなんだから!」とは言うものの、少なくとも学生の睡眠3時間を当たり前に受け入れてしまっている看護教育は完全に時代遅れで、残念ながら人としての扱いとはいえない部分も少なからずあります。
 
「学ばせていただいている身」として常に居心地の悪い思いをしながら、臨床指導者と教員の言うことの違いの板挟みになりながら、患者相手に無力感を持ちながら、それでも看護師になるという目標に向かって実習先に足を運ぶことはとても尊いことなのに、多くの看護学生は「実習メンバーは毎日ちゃんと来ているから」というだけの理由で、その尊さに対して非常に鈍感であるように感じてしまいます。
 
叱られようが、何もできなかろうが、普通の大学生なら3日で逃げ出すような無理難題に毎日頭を突っ込むことはそれだけで価値のある経験。もちろん、「看護学生以外の同年代は楽しやがって!」なんてプライドばかり上がることはみっともないけれど、
実習中は自分のできない部分に目が向きがちだからこそ、心の隅で覚えていて欲しいことです。
 
 
過去の私を含めた多くの看護学生は、実習中は異様なくらいに真面目です。授業の一環なのに実習前日に緊張でまともに眠れない子なんてゴロゴロいるし、やたら泣くし、過剰なまでに患者に「何かしてあげよう」とします。
看護師の先輩が「学生の実習の時が人生で1番頑張ってた。授業はまともに出てなかったけど」と言っていた時、ああ分かるなって思いました。社会人になってからの方がずっとラク。
 
大学4年生の時、私からみたら超優秀な子が「なんかね、高校生くらいまではいつも自分に自信持って過ごせてたのに、実習やったら『なんで私ばっかりできないんだろう』っていつも思うようになっちゃって新しいこととか何にもできなくなっちゃった。どうしよう」と話してくれた時、
極度に緊張し、自分の「できないところ」ばかりにフォーカスせざるを得ない環境が、実習という特殊な期間を超えて人生そのものの楽しみすら奪ってしまうのではないかと恐ろしくなりました。
 
先生たちは、「楽しい実習になるように」なんて言うけれど、そんなの現実的に考えて不可能です。せめて、必要以上に自分を責めてしまわず、せっかく入学した看護学校・大学を辞めることなく実習を生き延びられる後輩が少しでも多ければ良いなと思います。