プロセスレコード

水商売をしていました。看護師になりました。

ひとり親は「自己責任」なのか

 

水商売を卒業して、看護師になって7ヶ月が経ちました。

 

ナスカレでお馴染み、看護roo!さんに寄稿を始めました。月1くらいで書いてゆきます。

www.kango-roo.com

 

さて、10月末にこのキャンペーンに賛同しました。

 
発起者の、NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹氏のTwitterや批判している方のTwitterを見ながら、自分が夜の仕事をしていた時にシングルマザーをよく見かけていたため、彼女達の置かれている状況に感じるものがあり。
 
私が在籍しているキャバクラで働き始めた女性が、未婚で子どものいるシングルマザーだったことがあります。
 
正直そこまで可愛い子でも話の上手い子でもなく、競争の激しいこの業界では指名の無い日もあり、さらに彼女自身が鬱病を患っていたため、出勤の難しい日もあるようで。
 
水商売だけでは稼げないと実感したのか、彼女は中小企業の事務職を掛け持ちはじめました。
 
事務職が週何回なのかは知らないけれど、朝9時から終電後まで働いてさらにお客様と必要な連絡を取る生活は、誰の目にも分かりやすい形で彼女を疲弊させていきました。
だんだんと彼女が接客にまで疲れた顔を持ち込みはじめ、お酒を飲んでうとうとしてしまうこともあり、もう少し楽に働けないのかと訊いた私に対する彼女の言葉は、「子どもを作ったのは私の責任だから。私のせいで子どもの人生駄目になるの嫌じゃないですか」でした。
 
結局、入店当初から30歳近かった彼女は年齢的な理由と指名の取れなさから彼女はお店のスタッフにそれとなく退店を勧められるようになり、お店を辞め、連絡が取れなくなりました。
 
 
また、旦那のDVから逃げるように離婚して、1歳になる前の子どもを抱えながらも、自身の親と絶縁しているせいで実家を持たない女性は、シングルマザーだという理由で一般の企業から就職を断られ続けた結果、託児所付きの風俗店で働いていました。
 
「周りの女の子達はプロ意識持ってやってるけどさ、私はこの仕事大っ嫌いなんだ」と彼女は話します。そして、水商売同様競争の激しい風俗業界で、彼女はだんだんと稼げなくなっていました。それでも風俗の仕事をする理由を
「この子には私しかいないから。この子が頼れるのは私だけだから、仕事も自分も大っ嫌いだけど私が頑張らなきゃなあって」と話す彼女は、別の日には
「なんかもう最近、子どもが可愛いと思えなくなってきちゃったんだよね。手を上げないように、手を上げたら虐待になっちゃうからってそればっかり考えてる」と話していました。
 
いっそ母子分離した方が良いのではないかとか、生活保護の受給とか、私がどんなに考えて勧めても、「まだ頑張れるから大丈夫」と、彼女は頑ななままです。
 
全てのひとり親が私の見ていたような状況では無いとは思いつつも、ひとり親の50%以上が貧困という状況を知っており、2年前くらいから「性風俗が貧困女性のセーフティーネットになっている」という文言がテレビで話題になる度「いやもうセーフティーネットになってないでしょう」とげんなりしていたので、change.orgのこのキャンペーンは非常に興味深く追っていました。
 
インターネットの中での主な論点というか批判は、「ひとり親にだっていろんな人がいるんだから一括りにするな」というものでしたが、これに関しては駒崎氏のブログ記事に全面的に共感。
 
 
個人的に気になったのは、ネット上に散見される「自分勝手に子どもを産んだひとり親を助ける必要は無い」というものです。
 
未婚のひとり親に関しては、性教育の遅れた、コンドームを付ければ避妊できると思い込む人の非常に多い、年間人口中絶件数が19万件のこの社会で、それでも子どもを育てる決断をした人を責める権利が誰にあるのだろうか、と、「育てられないなら産むな」なんて、誰だって同じ立場になる可能性はあるのに、と思ってしまったり。
 
離婚については、国内の殺人事件の10%以上が配偶者によるものであり、3日に1人、配偶者による殺人が起きるDVに寛容なこの国で、自分の結婚した相手が“そういう人”ではない保証なんてどこにも無いにも関わらず、今の社会で子どもを産んでしまったら、離婚を選択することが賢い選択肢と言えないなんて、あまりに恐ろしい。
 
ひとり親の論争には必ず「自己責任」という言葉がつきまとうものだけれども、セクシュアリティやジェンダーに関する各分野の統計を無視し、「自己責任」と軽々しく投げ出してしまう神経って、浅はかな知性を自らさらけ出しているようなものじゃないかと思います。
 
私達は自分が思っている以上に自分の人生をコントロールできないし、「なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないの?」と思うような出来事もたくさんあるはず。そしてそれは子育てだって例外では無く。
 
ひとり親がポジティブな選択肢に、というと語弊があるのかもしれないけれど、決してネガティブでは無い選択肢のひとつになって欲しい。そしてそのためには、ひとり親を社会の被害者にすることは決して正しくないとは分かりつつも、少なくとも、ひとり親であっても最低限生活を成り立たせることができる環境が必要不可欠だと思います。
 
「ひとり親」には、自己責任、とか、いろんな人がいる、では済まされない多くの分野の問題が関わっているように感じるのです。だからこそ、このキャンペーンはとても意義のあるものだと思うし、署名を達成した今後も、ネットの中のお祭り騒ぎで終わることなく、建設的な議論の土俵に上がり続ければ良いなと考える次第です。
 
参考資料
警視庁(2015).平成25年の犯罪情勢.